Thermal height, BL top wind, Wind shearの間に関連があるようなので、Wind shearの値が異なる太田と加須でSkySightのSkew-Tを比較する。

どちらの地点でも750hPa(約8,000ft)を境に上空は乾いた西風、地上は湿った南風になっている。地上同士、500hPa (約5,000m) 同士を比べると、気温,風速,露点全て一致している。一方、太田と加須ではthermal heightが6,700ft, 4,000ftと大きく異なっており、地上と上空の状態が等しい2地点で、サーマルトップ高度だけが大きく異なっていることになる。

両者の違いは、上空の空気と地上の空気が接する750hPa付近にある。風速を見ると、太田では地上風速(南西5m/s以下)から上空風速(西風15m/s)まで770hPa-720hPaの1,000ftの間で急に変化しているのに対し、加須では850hPa-700hPaの約5,000ftの厚さの間で滑らかに風速が変化しており、750hPa付近の風速勾配は太田の方が大きくなっている。
温度についても同様の傾向が見られ、加須では地上から700hPaまで滑らかに温度が変化するのに対し、太田では750hPa面で温度が急に変化している。
地上と上空とで性質の異なる空気の間で温度や速度が急に変化していることから、太田では2つの空気が混じり合わず水と油のように分離していたことがわかる。逆に温度速度が滑らかに変化している加須では地上の空気と上空の空気がよく混じりあっていたことになる。

温度を見ると、地上で15℃, 7,700ftで-7℃, 17,500ftで-27℃なので、逓減率は地上〜7,700ftが 0.94℃/100m、7,700ft〜17,500ftが 0.67℃/100mで上空の方が安定度が高い。
これらの観察結果をまとめると、太田では地面付近の空気が安定な上空の空気層の影響を受けないため、両者の境界である8,000ft付近までサーマルが上昇できたのに対し、加須では両者が混じり合っているため、8,000t付近の空気の安定度が高くなり、サーマルトップが抑えられたのだと言える。

BlipmapもSkySightも、鉛直方向の拡散には何らかのモデルを使っている。
ここからは完全な推測だが、モデルが拡散を過小評価しており、実際には加須でのSkySight予測よりも混合が進んでいて上空の影響が地上にまで及んでいいたのだとすると、妻沼で予報トップ高度6,000ftに対して実際が3,300ftと大きく外れたことも説明がつく。
複雑な流れの中で拡散を正しく評価することは、流体解析としては難しい部類の問題なので、粗い全球解析+WRFでの予測で完璧な精度を求めることは難しい。

今日の結果だけから確定的なことは言えないが、
「上空と地上で空気の性質が大きく違い、鉛直方向の拡散が支配的になる状況では、予報が大きくずれる可能性がある」
を頭に置いておいた方が良さそう。

 skewT